| 狭いキレットの後は 快適な尾根道 玄倉−中ノ沢径路−東沢径路−同角ノ頭−石棚山稜−箒沢 2004年10月2日(土) |
| 2004年10月2日(土)、西丹沢:仲ノ沢径路−東沢径路−同角ノ頭…を歩いてきました。 今年から通い始めた小川谷周辺の山域、東沢乗越を通過する度に、同角ノ頭に向かう尾根が気になっていたからです。 |
| 【登山日】 2004年10月2日(土) 天気 晴れ 【マップ】 昭文社エアリア「丹沢」 ダウンロードマップ「東沢・同角ノ頭周辺」 【行 程】 新松田7:20=(バス)=玄倉8:05/8:15−立間大橋8:40−穴ノ平橋9:10− 仲ノ沢径路入口9:15/9:20−東沢入口10:15−湧水地点10:50/11:00− 東沢乗越11:15/11:20−1190m11:40−キレット11:45− 尾根合流点12:15/12:20−同角ノ頭12:50/13:15−石棚山稜分岐13:55− 石棚山14:35−板小屋沢ノ頭15:05−板小屋沢15:40/16:00− 箒沢公園橋16:20 【メンバー】 単独 |
| 友人から送られてきた山の資料を、朝1時過ぎまで読みふけっていた。それでもムリをして新松田発5時55分のバスに間に合わせようと、目覚ましを4時にセットしておいたのだが、やっぱり睡魔には勝てない。鳴り続ける時計に手を伸ばしスイッチを切ってしまった。 ハッと思って次に目を覚ましたのが5時30分頃、あわてて飛び起きる。やばい、急がなければ7時20分のバスにも間に合わなくなる。いつもの小さなザックを肩に食事も洗面もすませずに家を飛び出した。 小田急線は立っている人がチラホラぐらいの混みよう。厚木や伊勢原で降りる人が多いから次第に空席も目立ってくる。そんな乗客の入れ替わりをトローンと見送っているうち7時少し前に新松田駅に着く。 バス停に並ぶと今日は前から4番目。まだ時間はある。コンビニに行ってビール・お稲荷さんと、朝食代わりのサンドウィッチを購入。食べている内に行列も次第に伸びてきた。7時20分定刻通り出発したバスの中は全員が座ってまだ空席がある程度の乗車率。 |
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バスが酒匂川沿いの国道に出ると左前方に富士山が見えてくるが今日は薄〜く霞んでいる。空気の澄む秋晴れを期待していたのだが…。ぼんやり眺めているうちに本格的に眠ってしまった。目をさましたら神縄トンネル付近。8時少し過ぎに玄倉に着く。 降りた登山者は5〜6人。洗面をすませている間にそれぞれの目的地に散って行き、ボクが歩き始めた8時15分にはもう誰もいなかった。 湖面の下がった丹沢湖を左に見送りいつもの玄倉林道に入る。大型トラックが頻繁に行き来している。今日は土曜日だが川砂利の製造・運搬が盛んに行われている。 |
| 湖面の下がっている丹沢湖 |
| 8時40分立間大橋を通過。少し荒れた林道の所々にアケビが落ちていた。「秋分の日」を過ぎ、暦の上ではすっかり秋だが日差しは強い。穴ノ平橋手前の水場で喉を潤し、仲ノ沢径路入口に9時15分。木陰で一息入れる。1時間の林道歩きでもうTシャツは汗でぐっしょりだ。 初めてこの径路を訪れた時(2004/6/19)、入口が分からずそのまま林道を直進して道を失い、そのまま石棚山に登ってしまった。あれ以来何度この径路を訪れただろう。今は迷う事もないしどこに何があるかさえ覚えてしまった。夜道でなければあそこまでおよそ何分…と、行程まで読むことができる。 2度・3度と繰り返し訪れることでこの山域に対する目標がより広がってきている。現に今日の目標は、「東沢乗越から同角ノ頭に向かう!」という、ボクにとっての「未知への挑戦」。 |
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| 中ノ沢径路入口 |
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暑い日といってもさすがに秋、5分ほどの休憩で汗がすっかり引っ込んだ。9時20分出発。林道建設の時に押し出された土砂をトラバース気味に進めば木橋を渡って本格的な山道に入る。距離は短いがミニ「黒部・下の廊下(写真でしか見たことはないが)」に似てボクの好きな所だ。9時30分仲ノ沢を通過。 この先何本かの尾根と何本かの源頭部を越える。試みに越えた沢を数えてみたら仲ノ沢源頭部からデッチ沢源頭部まで、ボクのカウントで7本だった。 今は慣れたこのルート、イワシャジンやホトトギスなど、花を眺め写真を撮りながら歩く余裕もある。 |
| 仲ノ沢を通過 |
| デッチ沢・「欅平」と書かれた古い道標から先、以前あったザレ場のトラバースが廃道になり、尾根を小さく回り込んでからザレを一直線にロープで直登するルートに変わっている。 ザレの上部から右にトラバースする辺り、上に固定してあるロープまで少し距離があり、靴のエッジを利かせて慎重に詰めることが必要。 |
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| ザレた沢筋をロープで直上する |
| この先から植林帯に入り、小川谷廊下終了点から東沢径路入口に着いたのが10時15分。 一息入れただけで東沢に入る。水量は豊富だが流れは浅い。河床が固い岩盤だからそのまま水線に沿って登っても靴底を濡らす程度ですむ。小さな滝は脇を巻き、ナメ床はそのまま流れに沿って登る。 前回(2004/9/11)見たシラヒゲソウの花期は終わっていたが、濡れた岩肌に一群れのダイモンジソウを見つけた。 |
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| 東沢径路に入る |
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左手からの比較的大きな沢と合流する辺りから、沢筋がグッと狭くなり直線状に変わる。しかし大きな滝はないからそのまま水線にそって遡行することができる。 左手・ガレからの湧き水を見れば30m〜40m先に湧水地点。10時50分。壊れた水道管からあふれ出るように流れ出す「大地から生まれたばかりの水」を1リットルボトルに補充。冷たい水で喉を潤しながら10分間の小休止。 |
| 谷幅がだんだん狭くなってきた |
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東沢はこの先から涸れ沢に変わる。すぐに現れる二俣を左に進み急なザレを詰め、東沢乗越に着いたのが11時15分。以前谷側に落ちていた松田警察署の「警告板」が乗越に上げられ木が乗せられていた。 初めてこの乗越を訪れた時(2004/7/3)…、暑さと寝不足と未知のルートに対する緊張でヘロヘロだった。しかし今日はまだ疲れを感じない。これから向かう「東沢乗越−同角ノ頭」への期待に気力も充実している。 地図でルートを確認したら11時20分北に延びる尾根に取り付く。 |
| 東沢乗越 |
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入口は枯れたササ藪。その中に薄〜い踏み跡が見えた。2〜3分のヤブ漕ぎですっきりした自然林の尾根に変わる。急登とも言えない尾根道をあるか無しかの踏み跡を辿って淡々と登り続ける。振り返ればモチコシノ頭がもう目と同じ高さだ。 幅広い尾根の傾斜が次第にゆるくなってきた。落ち葉に隠れた踏み跡や倒木を越え1190mに11時40分。だだっ広い広場に雑木が茂り、木々の間から正面に小高いピーク、右手に石小屋ノ頭方面が見えた。 |
| 倒木を越える |
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このピークから先尾根は急に細く変わり目の前の急な斜面が次第に近づいて来る。 5分ほど進んだ先、急激に落ち込むキレット。左は東沢支流・右は同角沢支流に急激に落ち込み、前方は幅50cm、長さ1mにも満たない狭い鞍部だ。 手前・東沢乗越側は高さ2m〜3mの手がかりの全くないガケ、向こう・同角ノ頭側は10mを越えるやはり手がかりのない垂直に近い岩壁。 |
| 尾根が途切れ、狭いキレットが現れる |
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左側(西)は急激にガレ落ちていて下降・トラバースは不可能だ。右側(東)はどうだろう? 同角沢に向かって急激に落ち込んではいるが木々の根元をつかみながらの下降は可能だ。その先登り返しはどうだろう? かなりの急斜面だがやはり立木やササに頼って登り返す事は可能のようだ。 木の根をつかみながら同角沢側に少し下降、ザレを慎重にトラバースする。対岸にケモノ道らしい跡が見える。まずはそこまで辿り着こう。足の下で白ザレがジャリッジャリッと崩れていく。靴のエッジを利かせて慎重に…。 |
| 同角沢側にトラバースする。(右が同角ノ頭方面) |
| トラバースは終わった。次は急斜面の登り返し。細い木の幹、体重を支えるのに充分だろうか。枯れかかっているササの根元、折れたり抜けたりしないだろうか。確かめながら一歩もう一歩…。 ようやく固い地面の尾根筋に辿り着いた時、フッと肩の力が抜けるような気がした。このキレットの通過に20分近くも極度の緊張を強いられたのだった。 |
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| 固い地面の尾根筋に辿り着く |
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呼吸が整ったら急な尾根を登る。 12時15分左手・東沢出合(小川谷廊下終了点)に伸びる尾根と合流。やや平坦な窪地にザックを下ろす。緊張のある尾根はひとまず終わった。地図上ではここから先淡々とした登りが続くだけ。 ミカンをむく。甘酸っぱい果汁が少し乾いた口いっぱいに広がった。深い谷の向こうに石棚山稜方面が見える。その稜線付近は少し色づき始めている。 |
| 木の枝越しに石棚山稜を見る |
| 12時20分出発。周辺にブナが目立ってきた。朽ちて倒れた木、風雪に耐えて曲がりくねった幹、もちろんスッと伸びた幹も多い。 変化を楽しみながら淡々と登り続ける。右手高くに見えていた石小屋ノ頭がもう目と同じ高さだ。 |
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| 幹の曲がったブナ |
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周辺に岩が目立ってきた。岩を取り囲むように張っている根の形も面白い。大岩小岩をぬったり乗り越えたりしながら更に登り続ける。 左右に張っている尾根が近づき、行く手が次第に丸みを帯びてきた。 |
| 大岩・小岩が現れる |
| 12時50分同角ノ頭。山頂表示板の裏に飛び出す。ベンチが3脚。 今日の目標をやり遂げたゾ! ベンチにザックを下ろし持参のビールで小さく乾杯。それからいなり寿司の遅い昼食。 少し蒸し暑い日、汗で濡れた背中を秋の風が吹き抜けていく。 |
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| 同角ノ頭 |
| さて下山ルートはどうしよう? 「中ノ沢乗越から小川谷を経て玄倉へ」と「石棚山稜を経て箒沢へ」は時間的にほぼ同じ距離だ。少し高揚した気持ちが山稜コースを選ばせた。 充分休養し山頂を後にしたのが13時15分。植生保護のロープに沿って下ればすぐに木道が現れる。その先は長い階段。5年前(1999/10/9〜10/10)に歩いた時は一般登山道にしてはかなり荒れた感じのルートだった。静かな同角山稜を訪れる人が当時より多くなったのだろうか。 |
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| すぐに木道が現れる |
| 木々が少〜し色づき始めている。気温が下がれば紅葉も一気に進むだろう。小さなピークを越えた辺りで単独の登山者とすれ違う。今日初めて合う登山者だった。 中ノ沢乗越を過ぎゆるく登り返して13時55分石棚山稜分岐。植生保護のロープに挟まれた登山道をテシロの頭に向かう。スッと伸びる周囲のブナが実に見事だ。 |
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| ロープに挟まれた登山道を行く |
| 所々に鹿ネットを見る。ネットに保護された内側はササの勢いが強く緑も濃い。鹿の食性被害が一目瞭然だ。だが時々聞こえるピョーッという鋭い鳴き声。野生の鹿たちもこれから迎える冬に向かって、生きていくために精一杯なのだ。 ピークを過ぎた何の変哲もない場所に「テシロノ頭」を示す道標。14時5分に通過。 |
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| ネットの内と外 |
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その7分〜8分先、ブナ林の中にベンチが1脚。周囲に薄いガスが漂い始めている。葉を落としたブナ林を包む薄いガス。風情を感じて思わず立ち止まる。 今年(6/19)訪れた左斜面(東)がガレた地点から同角ノ頭が見えた。あの時は山頂上空にレンズ雲を見たが、今日の山頂はガスに包まれている。 |
| 同角山はガスにおおわれていた |
| 小さく下って1401mは北側を巻く。石棚山の標識を14時35分に通過。県民の森へのルートを左に見送りヤブ沢の頭に向かう。 小さな登り降りを繰り返す。大杉山からのバリルートを14時55分、板小屋沢ノ頭を15時5分に通過。ここから先、ササのトンネルを一気に下る。 |
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| 板小屋沢ノ頭からは一気に下る |
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急坂や鎖場を過ぎ山腹を回り込むと傾斜もようやくゆるみ、前方に板小屋沢が見えてくる。次のバスは16時25分だ。沢で汗を拭おう。 登山道から離れ少し上流に遡行して岩陰にザックを下ろす。15時40分だった。靴を脱いで流れに足を浸す。1分も浸けていたらジンジンとしびれるほど冷たかった。額の汗も背中の汗もみるみる引っ込んでいく。 冷たい流れで体を拭えば汗くささも少しは収まるだろう。靴を履き再び歩き始めたのは16時。 |
| 板小屋沢に出る |
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右岸に沿ってグングン下る。植林帯を過ぎ堰堤の上に出ると前方に箒沢権現山が見えた。 堰堤の右脇から階段を下って左岸に出る。植林帯を下り左に箒沢山荘のあった空き地を見送れば中川に沿うバス道路も見えてくる。公園橋を渡りバス停に着いたのが16時20分。 バスは予定より3分も早く来た。16時22分、ボクはほとんど待つこともなく車上の人となる。 |
| 箒沢公園橋バス停 |
| ※ この日(10/2)、マリナーズのイチローは年間安打数259本を放ち、84年ぶりの大リーグ記録を更新しました。(最終的には年間安打数262本に更新) 「小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただ一つの道」 という彼のコメントがステキです。 「自分にとって、満足できるための基準は」 という記者の質問に対して、 「少なくとも誰かに勝った時ではない。自分が定めたものを達成した時に出てくるものです。」 という彼の言葉を、未知の尾根をやり遂げた今、ボクは深く噛みしめています。 |
| 「誰も知らない 丹沢」へ |
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